中小企業の課長のAさん:
4000万の住宅を購入し、住宅ローンを組んで何年か経った時、会社が倒産して返済不能。デフォルトです。
ローン残高はまだ3000万ある。
仕方なく住宅を手放して清算することに。
信用保証会社が銀行に残りの3000万支払って(代位弁済)家を売却に出したが、2000万にしか売れなかった。
足りない1000万は直ちに
御支払い頂きますときた。
冗談じゃあない。ローンが払えなくて家を手放したのに、さらに1000万払えとはどういうことだ。もう、
首をくくるしかないではないか。
確か、信用保証料を60万ほど払わされたのに、あれは何のためだ。
保証会社の説明:
お客さん、あれは信用保証会社が銀行のために保証したものなんです。ですから、お客さんのための保証と
いうわけではありません。したがって代位弁済で銀行に3000万の支払いを済ませましたが、足りない分はお客さんから
頂きます。
これが世に言うローン地獄だ。
土地が値上がりしている時代なら売却して返済すればおつりがきた。
しかし、これからは売却してもマイナスになり
借金が残る。
なら………どうする。
「新しいローン制度ができました。
売却して返済しきれない場合でも後に不足分の追求がありません。
つまり、家を渡してしまえば
それでおしまいです。
このローンをノンリコースローンといいます。」
ノンリコースローンは第一に消費者のための制度です。
勿論金融機関のためでもあります。
いま、住宅ローン破綻が顕在化し今後益々増加する見通しです。不況で返済不能に陥りバブル期からの資産の値下りの為に借り換えもできず、 高い金利のまま続けるか、破綻を迎えるかの厳しい選択しかできない破綻予備軍は100万所帯ともいわれています。この原因はリコースローン制度にあります。 地価下落が続く間この現象は続きます。
いま、金利は最低水準であり、地価も下がってこれほど住宅の買いやすい時代はありません。にもかかわらず住宅産業が活性化 しないのは、ローンを組んで失業したらローン地獄が待っているという現実があるからです。しかし、米国にはこうした心配はありません。 失業したら賃貸に引っ越せばいいし、職を得ればまたローンを組めばいい。これは日米のローン制度の違いによるものです。
地価下落がローン破綻を招くなら、この先、住宅産業の活性化は期待できません。
ではどうしたらこれを打開できるか。それは市場の活性化をさまたげているローン地獄を取り除くこと、つまり、新しい「日本型のノンリコースローン」
を導入することです。
いま住宅ローン破綻は旧公庫だけで年間数万件発生しています。中には自殺者まで出すに及び隠れた社会問題化です。これはいまのローン制度 がリコースローンであることがひとつの原因です。リコースローンは支払が不能になったときに含み損があると、その分まで債務者が精算しなければ ならない制度です。これに対し欧米では含み損の部分は支払免責というノンリコースローンが当たり前です。 不動産の専門家である銀行が査定をして担保に取ったにも拘わらず、価値が下がったからといってそれを借り手の責任に全て押し付ける制度、これが 今までのリコースローンです。これでは地価値下りの時代安心してローンを組めないのです。
これに比べノンリコースローンは担保割れリスクを貸し手である銀行、または、信用保証会社が負うわけで、その分の保証料を借り手から 余分に取ります。
少子化により必然的に不動産が値下りする時代においては、ローンユーザーを守るためにも金融機関を守る ためにもノンリコースローンを普及させなければならないのです。
ノンリコースローンを始めるにはもうひとつ大切な条件があります。それは住宅の品質が高くなければならないことです。 幸い、30年前の住宅に比べ今の住宅の品質は格段に向上してきました。
ノンリコースローンはローンユーザーにとっては無条件に良い制度ですが、保証会社にとっては土地の値下りと住宅の値下りでは破綻時の債権回収が 充分出来ないために、少なくとも返済期間中の住宅の値下りは極力避けたいのです。
つまりノンリコースローンを実施するためには高品質な住宅という前提があってはじめて成り立つのです。逆に考えますと耐久性の高い住宅は 保証料を安くすることができるわけです。これによってこれからの住宅は品質、耐久性能によって差別化され、そこにほんとうの住宅の品質 競争が始まります。住宅性能を適正に評価し価格や金利、保証料に合理的に反映するシステムをデューデリジェンスシステムといいます。
幸い、住宅品質確保促進法の柱として住宅性能表示制度ができ、性能評価の申請が増加しています。
デューデリジェンスシステムが普及し住宅の品質が向上してきますと自然と中古住宅の市場が活性化してきます。いままでは20年 経った住宅は資産価値がありませんでしたが、40年耐久住宅や60年耐久住宅なら中古市場の流通が可能です。
過年、国土交通省はこうした背景から、住宅市場整備行動計画をまとめ、中古住宅流通市場の整備に向けて動き出しました。 具体的にはデューデリジェンスです。また、これに呼応するように、三井不動産販売の子会社リスペクト建物調査やミサワホーム、 旭化成住宅販売等住宅関連会社が中古住宅査定専門会社をつくり、あるいは住宅エスクローの組織ができるなど徐々に中古住宅流通市場の整備が進みはじめました。
欧米諸国で耐久性の高い住宅が普及しているのはノンリコースローンとデューデリジェンスシステムによるところが大きいといえます。そして その結果として、中古住宅市場が活性化しています。そしてまた、活性化していればデフォルトした住宅の市場流通が楽になります。
資源の有効利用という観点からもこれから日本でも普及させていかなければならないシステムといえます。
法律の整備と相俟って、最近の住宅は高い耐久性と欧米に負けない品質を見ることが出来るようになりました。しかし、いまの多くの住宅ローンは 品質によって保証料の差別化をしていません。
デューデリジェンスにより適正評価を受けた優良住宅に対しては、金利と同時に保証料についても優遇し差別化することによって 住宅品質は益々向上し、中古市場も活性化しひいては資源の有効利用に繋がることとなります。
これまで、信用保証会社はあまり顧客の前面で仕事をしていません。そのため、今のローン制度では支払いができなくなったときに 思いもよらない追徴金が発生する恐れがあるという、お客様にとって最も大切な危険の存在をほとんど説明していません。これはお客様の側に たった会社でなかったからです。このような顧客不在の時代が続いたのです。新しい会社は顧客の為にどんな制度が良いかこの点を第一に考えます。